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脊柱の後遺障害

後遺障害の対象となる「脊柱」とは

後遺障害の対象となる「脊柱」は、頸椎、胸椎及び腰椎です。
解剖学上は、仙骨及び尾骨も脊柱の一部であるとともに、骨盤骨の一部をなしていますが、後遺障害等級上の「脊柱」の障害とは、頸部及び体幹の支持機能ないし保持機能及びその運動機能に着目したものであることから、これらの機能を有していない仙骨及び尾骨については、「脊柱」には含まないものとされています。
なお、脊柱の運動障害については、腰仙関節の動きを含めて等級を認定されます。

障害認定の原則

脊柱の障害は、以下のとおり、変形障害と運動障害と荷重機能障害があり、脊柱の各状態に応じて、後遺障害等級が認定されます。
脊柱のうち、頸椎(頸部)と胸腰椎(胸腰部)とでは主たる機能が異なっている(頸椎は主として頭部の支持機能を、また、胸腰椎は主として体幹の支持機能を担っている。)ことから、障害等級の認定に当たっては、原則として頸椎と胸腰椎は異なる部位として取り扱い、それぞれの部位毎に等級を認定することとされています。

変形障害

変形障害の具体的内容

後遺障害 後遺障害の具体的内容 等級
脊柱に著しい変形を残すもの 「脊柱に著しい変形を残すもの」とは、エックス線写真、CT画像またはMRI画像(以下「エックス線写真等」といいます。)により、脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいう。
  • ア 脊椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。この場合、「前方椎体高が著しく減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さ以上であるものをいうこと(下記6級5号のアの具体例1参照)。
  • イ 脊椎圧迫骨折等により1個以上野津遺体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。この場合、「前方椎体高が減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上であるものをいうこと(下記6級5号のイの具体例2参照)。
6級5号
脊柱に中程度の変形を残すもの 「脊柱に中程度の変形を残すもの」とは、エックス線写真等により脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいいます。
  • ア 上記6級5号のイに該当する後彎が生じているもの
  • イ コブ法(※下記コブ法に関する説明参照)による側彎度が50度以上であるもの
  • ウ 環椎または軸椎の変形・固定(環椎と軸椎殿固定術が行われた場合を含む。)により、次のいずれかに該当するもの。このうち、a及びbについては、軸椎以下の脊柱を可動させずに(当該被災者にとって自然な肢位で)、回旋位または屈曲・伸展位の角度を測定すること。
    • a 60度以上の回旋位となっているもの
    • b 50度以上の屈曲位または60度以上の伸展位となっているもの
    • c 側屈位となっており、エックス線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
      ※ 環椎または軸椎は、頸椎全体による可動範囲の相当の割合を担っている。そのため、環椎または軸椎が脊椎圧迫骨折等により変形して固定となり、または環椎と軸椎との固定術が行われたために、環椎または軸椎の可動性がほとんど失われると、頸椎全体の可動範囲も大きく制限され、上記に該当する変形・固定となると、「脊柱の運動障害(8級2号)」にも該当するケースがほとんどである。なお、環椎または軸椎が変形・固定していることについては、最大矯正位のエックス線写真等で最もよく確認できる。
8級準用
脊柱に変形を残すもの 「脊柱に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  • ア 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  • イ 脊椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除く。)
  • ウ 3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの
11級7号

6級5号の具体例

6級5号のアの具体例1

3個の椎体の前方椎体高が減少した場合で、この3個の椎体の後方椎体高の合計が12センチメートル、減少後の前方椎体の合計が7センチメートルであるときは、両者の差である5センチメートルが、3個の椎体の後方椎体高の1個当たりの高さである4センチメートル以上となっているので、6級5号に該当する。

6級5号のイの具体例2

2個の椎体の前方椎体高が減少した場合で、この2個の椎体の後方椎体高の合計が8センチメートル、減少後の前方椎体高の合計外5.5センチメートルであるときは、両者の差である2.5センチメートルが、2個の椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%である2センチメートル以上となっているので、コブ法による側彎度が50度以上の側彎を伴うものは6級5号に該当する。

変形障害の測定方法

「脊柱に著しい変形を残すもの」及び「脊柱に中程度の変形を残すもの」は、脊柱の後彎または側彎の程度等により等級を認定することとされています。この場合、脊柱の後彎の程度は、脊椎圧迫骨折、脱臼等(以下、「脊椎圧迫骨折等」という。)により前方椎体高が減少した場合に、減少した前方椎体高と当該椎体の後方椎体高の高さを比較することにより判定します。また、脊柱の側彎は、コブ法による側彎度で判定することとされています。
なお、後彎または側彎が頸椎から胸腰部にまたがって生じている場合には、上記障害認定の原則にかかわらず、後彎については、前方椎体高が減少したすべての脊柱の前方椎体高の減少の程度により、また、側彎については、その全体の角度により判定する必要があります。

コブ法

コブ法とは、下図のとおり、エックス線写真により、脊柱のカーブの頭側及び尾側においてそれぞれ水平面から最も傾いている脊椎を求め、頭側で最も傾いている脊椎の椎体上縁の延長線と尾側で最も傾いている脊椎の椎体の下縁の延長線が交わる角度(側彎度)を測定する方法のことです。

コブ法の方法

運動障害

脊柱に運動障害を残すものは、運動障害の程度に応じて、以下の後遺障害等級が認定されます。なお、運動障害の測定方法については、関節の機能障害の評価方法をご参照下さい。
エックス線写真等では、脊椎圧迫骨折等または脊椎固定術が認められず、また、項背腰部軟部組織の器質的変化も認められず、単に、疼痛のために運動障害を残すものは、局部の神経症状として等級を認定することとされています。

後遺障害 後遺障害の具体的内容 等級
脊柱に著しい運動障害を残すもの 「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかにより頸部及び胸腰部が強直したものをいう。
  • ア 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折頭が存しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  • イ 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
  • ウ 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
6級5号
脊柱に運動障害を残すもの 「脊柱に運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  • ア 次のいずれかにより、頸部または胸腰部の可動域が参考可動域の角度の1/2以下に制限されたもの
    • a 頸椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
    • b 頸椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
    • c 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
  • イ 頭蓋・上位椎間板に著しい異常可動性が生じたもの
8級2号

荷重機能障害

後遺障害 等級
荷重機能の障害の原因が明らかに認められる場合であって、そのために頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの 「荷重機能の障害の原因が明らかに認められる場合」とは、脊椎圧迫骨折・脱臼、脊柱を支える筋肉の麻痺または項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化が存し、それらがエックス線写真等により確認できる場合をいうものであることをいう。 6級準用
荷重機能の障害の原因が明らかに認められる場合であって、そのために頸部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの 8級準用
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