まずは必ず警察に通報しましょう。
警察に通報した後に加害者の身分を確認した方が、仮に加害者の身分確認や事故の責任を巡ってトラブルになったとしても、その途中で警察が駆け付けて仲裁に入ってくれる可能性があるからです。逆に、加害者の身分確認等をした後に警察に通報しようと思っていたとしても、確認の途中で加害者とトラブルになってしまうと警察に通報するタイミングを失いますし、通報の素振りを見せた途端に加害者が自転車で逃走を図る可能性もあります。ひいては加害者の口車に乗せられて事故現場で加害者と明らかに低額な金額で示談してしまい、結局のところ警察に通報せずに終わることもあります。
また、自転車事故であっても、警察に事故報告を行えば、事故証明書が発行されます。事故による怪我の痛み・障害は、興奮状態にある事故直後ではなく、事故発生から少し時間が経ってから生じる場合もあるため、事故直後に安易に示談すること自体避けるべきですが、警察に通報しなければ、交通事故証明書が作成されず、後に障害が発症した後に加害者や加害者側の保険会社に損害賠償金を請求しても、そもそも事故があったこと自体を否定されかねません。事故証明を作成してもらい、交通事故を交通事故として明るみにするためにも、まずは警察に通報するのが第一です。
また、交通事故によって被害者が負傷した場合には、現場に駆け付けた警察によって実況見分が行われます。実況見分は、中立の立場にある警察が、交通事故発生直後の生々しい事故状況や、双方の事故当事者や現場にいた目撃者の認識をもとに事故態様等を詳細に記録しますので、後に訴訟になった場合でも、事故態様を証明する非常に重要な証拠となります。
自転車も、道交法上「軽車両」に該当しますので(道交法2条1項8号・11号)、自転車同士の事故の場合、いずれの自転車運転者も、救護義務等の緊急措置義務のほか、事故報告義務(同法72条1項)を負います。
すなわち、自転車運転者は、事故発生後、直ちに車両等の運転を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません。
また、自転車運転者は、直ちに警察官に交通事故が発生した日時及び場所、事故による死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊したもの及びその損壊の程度、事故にかかる車両等の積載物並びに事故について講じた措置を報告しなければなりません。
これらに違反すると、処罰される可能性があり(救護義務違反については1年以下の懲役又は10万円以下の罰金:同法117条の5第1号。事故報告義務違反については3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金:同法119条1項10号)、また「ひき逃げ」として処罰される可能性もあります。
自転車同士の事故の場合、自分が被害者と考えていたとしても、事故報告義務がありますので、必ず警察に通報しましょう。